願いを実現する和歌コトバ
古代の素敵な風習などについて書いてゆきたいと思います。 願いをかなえる和歌コトバ 世の中はまさに、神様ブームの模様です 実は、コトバには魂が宿る、 古代のひとびとはそう考えました。 山にも、森にも、木々にも、 小川にも、岩にも、石にも 神さまが宿っているように コトバにも神が宿っていると考えたのです。 そのコトバを発することで、 物事が生み出されると信じられてきました。 事象→コトバ ではなく コトバ→事象 なのでした。 その際、こうなってほしいと 望むのではなく、既に 実現したこととして 感謝して祝うという 予祝 という願い方に特徴があります。 「〇〇になりますよう」ではなく、 「実現しました、ありがとう」というように 親しく尊敬を持って土地の神様に呼びかけ、 願いが実現するよう、祈りをささげたのです。 大和には 群山あれど (大和の国には多くの山々があるけれど) とりよろふ 天の香具山 (とくに美しい香具山) のぼりたち国見をすれば (その頂に登って見渡せば) 国原は 煙立ち立つ (里には家のかまどの煙が盛んに立ち上り) 海原は 鴨立ち立つ (海にはかもめが盛んに飛び立っている) うまし国そ 蜻蛉島 大和の国は (ほんとうにうるわしの国だよ。大和の国は) このように実際の風景というより、 日本(大和)の国は こうあって繁栄してほしい、という 理想の姿が歌われているのです。 ほんとうは香具山から海はみえませんが、 より豊かな暮らしをイメージした 家のかまどの煙、海や川の産物、田畑の豊作 そんな豊かな国への願いをこめて。 そうして和歌コトバにすることで 五穀豊穣があらかじめ神様に 約束されたこと意味しているのです。 既に実現したことに感謝するかのように祝う それが「予祝」です。 古代から、このような形の歌を皆で歌うことで 神に五穀豊穣を祈ってきたのでしょう。 「うまし国、蜻蛉島(あきずしま)」 という大和の国のネーミングですが、 海と陸とからなる日本全体の映像を 表現するような視覚的な美しいコトバが並んでいます。