和歌に見る恋のジンクス①

万葉人が信じていた、ユニークな恋のジンクスをご紹介しましょう。

何だか眉がむずがゆい、くしゃみがでそう→恋人に逢える兆候

現代人なら風邪や花粉症のせいだと思ってしまうでしょうが、
万葉人は恋人に逢える兆候だと思っていました。

(男) 眉根痒き 鼻ひ紐解け 待てりやも いつも見むかと 恋ひ来し我を

眉をかき、くしゃみをして、紐をほどいて待っていてくれたの?
君のことばかり思っている僕のことを。

訳すれば  こんな感じです。それに対して、女性の返事は

(女)今日なれば 鼻ひ鼻ひし 眉痒み 思ひしことは 君にしありけり

たしかに今日はクシャミも出るし、眉も痒くてたまらなかったわ、
それはあなたのせいだったのね。

いや、単なる花粉症でしょう?なんて
言ってはいけません。当時の人々は
シリアスにそう信じていたのですから。

眉を掻いて、くしゃみをして
君のことのことばかり思っている僕のことを。
訳すれば  こんな感じです。

くしゃみをするのは人が自分を思う兆し、
というジンクスに基づき歌った和歌をもう一首。

(男)うちはなひ 鼻をぞひつる 剣大刀 身に添う妹し 思ひけらしも

くしゃんと、くしゃみをした。腰にさした剣の太刀のように
いつも寄り添う妻が、今僕のことを思っているらしいよ。

相手が自分のことを思ってくれているのか、
今日はきてくれるのか、恋は不安で、つらくて、
切なくて。そんな気持ちは今も昔も変わらないですね。
そんな和歌がですが、結構楽しく読めてしまいます。




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