バラッドと歌の起源



  イギリスはヨーロッパの辺境にあったために、スコットランドやアイルランド、イングランドに古くから民衆の間で継承されてきた物語性の強い伝統歌が残っています。それがバラッドです。
 バラッドの語源はballare (踊る)で、4行で1連で作られ、1、3行目は歌い手がいて2、4行目をダンサー皆でリフレインを歌うものが主流です。

 Are you going to Scarborough Fair ?
 "Parsley, sage, rosemary and thyme"

 Remember me to one who lives there

 For once she was a true love of mine



 スカーバラの市へ行くのなら
 「パセリ、セージ、ローズマリーにタイム」
 そこに住むあの人によろしく伝えて下さい
 彼女はかつて私の真実の恋人でした



というのは、スカボローフェアの一節ですが、妖精と人間のやりとりで、
魔界の住人である 妖精が、旅人に問いかけ、魔界にさらっていこうとしています。
そのたくらみを見抜いた旅人は、「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」 と
魔よけ効果のある植物(ハーブ)の名を唱えて、うまく逃げおおせたという、考えてみれば不思議な
歌ですよね。           

Take the Fair Face of Woman... ソフィー・アンダーソン

 バラッドは姿形を変えながら、現代までロックやフォークミュージックの中に続いています。そのあたりは茂木健さんの著書「バラッドの世界- ブリティッシュ・トラッドの系譜 -」(春秋社)に詳しく書かれています。
 15世紀頃までのバラッドは、円を描きながら集団で踊るためのダンス音楽で、中心となる歌い手と踊り手が交互に歌うというコール&レスポンスのスタイルだったそうです。こうしたスタイルのバラッドは現在ではオールド・バラッドと呼ばれています。


その後16世紀になってブロードサイド・バラッドが生まれたました。「ブロードサイド」とは、16世紀にイギリス中で発展した情報誌です。当時文字の読めない人も多く売
り子の中から記事を歌に乗せて宣伝したり、記事を歌にして紙面に載せたことに由来します。このことからブロードサイド・バラッドと呼ばれることになったわけです。そこには、社交界のゴシップ・や殺人事件、結婚、葬儀の情報などから、魔女、妖精、英雄あらゆるものが歌われたようです。

 スウェーデンの郊外の古い木の教会の建てものをみたことがありますが、昔は窓をあけてお知らせの内容を歌にのせて歌い、町中に広めたそうです。歌をニュースのように使っていたのですね。








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